勉強の哲学 来るべきバカのために 増補版
僕は普段人に本を読めとは決して言わないからか、自分が読まなくなった時に読書に復帰するための論理を持っていなかった。
この一年ほとんど本を読めなかったのだ。実感だが、本を読まない生活は誰かが作ったゲームの中に生きているようなもので、その受動的生活には不思議な充実感と中毒性がある。
本を読まないと、社会と自分との間に不調和が少ないからだ。そうなると再び本を読み始めるのはハマっているゲームをやめるぐらい難しいということに気付く。たぶん、夢から醒めるよりも、もう一度同じ夢をみるほうがいいからだ。
人は何のために読書や勉強するのか?「勉強の哲学」はツッコミとボケを使ってそれをシンプルに説明するが、勉強の押し売りはしない。むしろ勉強のデメリットについて正直に触れた珍しい本だろう。たしかに勉強すると、今いる社会からは浮いてしまうのだ。
僕が思うに、大切なのは「社会が作ったゲーム的世界」と「自ら学んで作っていく現実」の境を見極めてそれを越境することだ。どちらか一方に留まることで他方を敬遠するのではなく、両方を往来できること、それが知性ではないだろうか。少なくとも、僕はそのように学びたい。
平凡の中に美を見つけ出す勇気を持ち、創造性が持つ独特の傲慢さにも気づくこと。
久しぶりの読書は僕を生きにくくしたかもしれない。バランスが難しいよね。まだまだリハビリ中だ。
大分合同新聞GXpress しおり 読書リハビリ中 令和3年6月10日掲載分に大幅の加筆修正をしております。