本には内容とは別に、「肉体」があって、「本の肉体」を扱うのが古書店なのだというお話をしている。
「画家レンブラントは、日本の紙の美しさと、持ちまえの気だてとを見きわめ、エッチングに、スケッチに、いちはやく和紙を使った」と英文学者の寿岳文章は書いている。
現在、和紙の魅力に日常で触れることはあまりない。
戦前の古書は和紙の魅力を知るのにも最適である。
その中でも特別な1冊を紹介したい。
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「ランボオ詩集 学校時代の詩」特製本 限定30部
1933年 三笠書房 刊
アルチュル・ランボオ 著
中原中也 訳
秋朱之介 装
青色二方耳付天アンカット和紙
この本にある訳詩は今も普通に売っている岩波文庫「中原中也訳 ランボオ詩集」で読める。僕も持っている。
今すぐ読みたい人はなんと青空文庫に全てアップされている。短いのでざっと読んでみてほしい。
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活字の印圧の感触。
青い紙面。
耳付き和紙の贅沢な佇まい。
綴じ糸は革紐である。
そしてなんと言っても透かし模様の和紙カバー。信じがたいほど繊細な素材で、こんなものがよく90年の時を超えて残ってくれた、と涙が出そうになる。
この本は特製本30部限定。
現在、何冊残っているのだろうか。
岩波文庫や青空文庫で読んでももちろん、ランボオの詩だ。
だがもともとこの詩集はこんな和紙の肉体を持っていたことを知ると、もっと楽しめるのではないだろうか。
この本を手掛けたのは秋朱之介(本名 西谷操)という装釘家。
#恩地孝四郎のこと で装本家 恩地孝四郎を紹介したが同時代の人だ。
「装釘」と「装本」、はそれぞれ秋朱之介と恩地孝四郎が好んだ言いまわしにしたがっているが、ここでは同じ、本の工芸的、意匠的な制作のことを指している。
恩地のモダニズムに比して、秋朱之介の、なんと、セクシーな作り込みだろうか。
華奢であるが目を惹き、どこか不安にさせられながら、目が離せなくなる。
そして古典的な存在感を追いかけながら、現在の美意識でひねりを入れる。
秋朱之介の本は、とにかく色っぽいのだ。
秋朱之介は自分で以士帖印社(えすてるいんしゃ、と読む。知らずに読めるわけがない笑)という出版社を興しているし、他社でもたくさんの装釘を手掛けます。
秋朱之介装釘本、カモシカ書店には他にもいくつかございます。
興味をお持ちくださった方はお気軽にお声がけください。
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#カモシカの初版本